醸造、発酵技術の研究・開発と共に150余年
弊社は文久二年(1862年)、麹屋宇兵衛が営む造り酒屋から始まりました。
その時日本は江戸時代から明治時代へ、刀を持った侍から西洋文化を取り入れた近代化へ大変革を成し遂げた時でした。当時、人々の間で「散切り頭をたたいてみれば文明開化の音がする。(侍の髪型である「ちょんまげ」から今のような髪型に変わったことを歌にしている。)」といわれておりました。そして一番の流行り言葉であった「文明開化」という言葉から宇兵衛は「開化」という言葉をとり、日本で一番のお酒になるという意味をこめて、その時仕込んだ日本酒を「開化一」と名付けました。
開化一はとても高級なお酒であり、美味しさが評判になって数々の賞を取りました。その後、「京風味」と共に宮内庁御用達となり沢山の著名人に愛されました。形状は一升瓶から清水焼の高価な陶器にいれたものまで販売しておりました。
発売から数年経ち、段々と開化一・京風味の生産量が増えてきました。そして従業員だけでは、人が足りなくなり季節労働者(期間限定で働く人)を毎年仕込みの時期に雇うようになりました。しばらくすると五代目当主・中村宇吉にある噂が入ります。「中村家で働いてからもう何年も風邪をひいていない。」「病弱だった体質が改善された。」「結核や持病の喘息が治った。また中村家で働きたい。」など。中村宇吉は中村家独自の日本酒醸造工程に何か秘密があるかもしれないと考えるようになりました。もしその秘密がわかれば、世の中のお役に立てるかもしれない!中村家の酒造りに関係するすべてを京都大学、京都府立医大に提出して調べてもらうことにしました。すると京都大学の先生方から「何か抗菌性のある菌のようなものがある。炎症や出血を抑える効能がありそうだ。もし取り出すことができれば、すごい医薬品になる。」との報告を受けました。中村宇吉は、これは使命だと思い全財産を懸け研究に取り組みました。途中苦難の連続でしたが、必死に研究し、約20年の歳月をかけ中村菌熟成発酵液を主成分とした医薬品・ユナルゲンの製品化に成功いたしました。そして昭和16年(1941年)にナカムラ酵素の前身である株式会社中村菌化学研究所を設立しました。
ユナルゲンは当時から画期的な医薬品で第二次世界大戦時には救急薬として活躍し、終戦後にマッカーサー司令部が視察、共同研究を得て連合国軍総司令部より偉大な発明だと表彰されました。この時代、アジアにはペニシリンがなく抗生物質という言葉もありませんでした。
共同研究した連合国軍総司令部は抗生物質のような効力を持つユナルゲンに驚愕したといわれています。共同研究の最後の課題であったユナルゲン対ペニシリンの抗菌作用対決は見事にユナルゲンが勝利して世界的にも素晴らしい医薬品であることを証明いたしました。
創業から150余年、たくさんの変化がございましたが、その理念は決して変わりません。お客様が私どもを必要としてくださっている限り、いつまでも変わらぬ安心と信用を築き上げていくことが使命だと考えております。
代表取締役 古川士恭